フィティン峰を目指して【Mt.Khuiten】
モンゴル最高峰Mt.khuiten(フィティン峰)を目指し登山してきました!
目標のフィティン峰はアルタイ山脈に属するタバンボグド連山の標高4374mの山で、モンゴル最高峰でもあります。
その山を目指して、2019年9月に海外登山をしてきました。
目次
日程
9/1 成田空港→チンギスハーン国際空港(ウランバートル)
9/2 チンギスハーン国際空港→ウルギー空港(ウルギー市内にて買い出し)
9/3 ウルギー→タバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)
9/4 ゲート→BC
9/5 BC→Mt.Malchin→BC
9/6 BC→HC
9/7 HC停滞
9/8 HC→Mt.Nairmandal→HC→BC
9/9 BC→タバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)→ウルギー
9/10 ウルギー滞在
9/11 ウルギー→ウランバートル
9/12~13 観光
9/14 チンギスハーン国際空港→成田空港
日本→ウルギー
(9/1)
今回の登山のメンバーはM先輩と同期のS、そして僕の3人です。
1日に成田空港にて集合し、いよいよモンゴルへ!
多少出発が遅れウランバートルのチンギスハーン国際空港に到着するころにはすっかり夜になっていました。
(9/2)
ウルギー行きの国内線はチンギスハーン国際空港を早朝出発するので、この日は早起きして手続きを済ませました。
荷物は預け10㎏、持ち込み5㎏で、両方ともまとめて計量し15㎏を超過した分の超過料金を支払いました。超過料金はモンゴルの通貨で4000Tg(トゥグルグ)/1kgとかなり安かったです。
ウルギーまでは小型ジェットだったのであっという間に到着しました。1本しかない滑走路は事前情報とは異なり綺麗に舗装されていて、良かったような少し残念なような…
ウルギーに到着後、今回お世話になるエージェントの家に行き、諸々打ち合わせしたのちに本日の宿へ向かいます。ウルギーは小さい町ですがそれでも徒歩で移動するには広いのでエージェントの旦那さんに送迎をお願いしました。
宿にチェックインしたのち、ウルギー市街地を観光がてら買い出しをします。
ウルギーは地理的にはモンゴルの西の果ての街ですが見た目のこじんまり具合とは裏腹にかなり栄えている印象を受けました。街はずれも街中もどちらもあちこちで工事していたので10年後には大きく変わってしまうんだろうな。
食事をとり買い出しを終えると後は自由行動なので軽く散歩をして翌日に備えます。
ウルギー→BC
(9/3)
エージェントの旦那さんとガイドのドライバーに8:00頃迎えに来てもらい、タバンボグド国立公園ゲートまで移動しました。
てっきりUAZで移動するのかと思いきややってきた車はランドローバー。決して車高の低い車ではありませんが、荒れた未舗装路の前には無力でした。
ウルギーを出て4,5時間ほどはかなり走りやすいダートだったのですが、モレーンが出てきた辺りから道はガタガタのボコボコになりました。
マフラーは外れるわパンクはするわでゲートまで8時間強かかりました。
やっとの思いでタバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)に到着し、ゲートに駐在している人に身分証明書(パスポート)を見せ、テントを張りました。
(9/4)
この日は朝から雨でした。
10時にラクダが来て出発する約束でしたが時間を過ぎても来なかったためエージェントの旦那さんが催促に行き、11時頃やっと出発できました。
この行程がなかなかにきつかった。正直今回の遠征で2番目にきつかったと思います。(1番目がいつだったかはまた後ほど)
雨は標高が上がると雪に変わりました。おまけにルート上には湿原があり、もちろん木道とか橋みたいなものはないので時折キンキンに冷えた水の中に足を突っ込んで歩かねばなりませんでした。
それはまだ良いとして、何よりきつかったのは3.5時間ほどの行程で一度も休憩をしなかったこと。
ラクダを連れた遊牧民のお兄さんは馬に乗ってズンズン進んでいきますが僕らは歩き。英語を話せず僕らもモンゴル語やカザフ語を話せませんでしたし、別に休憩しなくてもギリギリ歩けちゃうくらいの速度だったので彼に「日本人フィジカル弱すぎw」とか思われちゃたまらんという意地が働き、結局一度も休憩せずにBCに到着してしまいました。
さすがに疲れた…
BCにはちらほらと他のパーティーがいましたが皆マルチン峰だけ登る予定とのこと。
高所順応
(9/5)
この日は高所順応を兼ねてマルチン峰(4050m)に登ります。
明瞭な踏み跡がついていますし一部わかりにくい箇所にはケルンが積んであるので迷うことは基本的にないと思いますが、前日付いた雪のせいで踏み跡が埋もれかなり歩きにくかったです。
マルチン峰へ登っている途中、BC周辺をうろついていた犬のうち一匹が追いかけてきました。
さっすがに頂上までは付いてこないだろと高を括っていたのですが、なんとこの子一緒に登頂するのはもちろん、下山まで一緒でした。野良っぽくもなかったですしこの犬は一体何なんだろう…?
なにはともあれわんちゃんは可愛い
山頂から氷河の様子を偵察し、下山します。
下山は登りに使った踏み跡より北側にある雪渓を一気に下りました。筆者は4000m峰は初めてでしたが幸い高山病にはなりませんでした。しかしこの世には”下山病”というべきものもあるらしく、この雪渓を調子に乗ってかなりの勢いで降りた結果、頭痛に襲われました。結局夜まで頭痛に悩まされる羽目になりました。
山頂アタック
(9/6)
いよいよモンゴル最高峰フィティン峰へのアタック開始です。この日はBCから氷河上を歩きほぼ富士山と同じ標高のHCを目指します。
氷河へのアクセスについては、マルチン峰の尾根への取り付きあたりまでは昨日歩いた道を行きます。次にマルチン峰の登りはじめからモレーンとマルチン峰との間にできた沢筋を歩き、途中でモレーンの上に登るといくつかケルンがあるのでそれに沿って進み、良さそうなところでモレーンから氷河に乗りました。
本格的な氷河を歩くのは僕とSにとっては初めてのことでヒドゥンクレバスに落ちないかとかなりビビッていましたが想定よりも氷河は安定しており、クレバスに落ちることはほとんどありませんでした。
M先輩が高山病にかかりかなりキツそうでしたがなんとかHCに到着。
HC周辺はガチガチに凍り付いた雪の上に数センチの雪が積もっているといった感じでした。一見クレバスもなく安定しているように見えますが周辺にはいくつかヒドゥンクレバスがあるようでした。
BC時点で怪しかった翌日の予報ですがHCにて天気予報を確認したところ翌日の天気はほぼ荒天で確定。翌日の早朝に賭けて眠りました。
(9/7)
早朝起きてみると風が強く降雪もあり、時折視界不良になっていたためこの日はHCにて停滞することに。
ひたすらワードウルフをやって時間を潰し夕食をとった後、風が残るもののかなり視界が良くなったため外に出て周辺の様子を観察し話し合った結果、フィティン峰へのアタックを断念しました。代わりにフィティン峰からマルチン峰に至る稜線上にあるモンゴル、中国、ロシアの国境が接するナルマンダル峰(4082m※地図によって標高の表記はまちまち)なら登れそうだとルートを検討し、翌朝夜明けとともに出発することになりました。
(9/8)
朝は快晴でかなり冷え込みました。
HCから出発してすぐ、足元から明らかに空洞になっている音がして生きた心地がしませんでしたが何とか通過。
HCからは状態が分かりにくかった稜線への取り付きと斜面も特に難なく通過でき、無事に稜線に乗ることができました。
すぐ横が中国との国境ですので決して越えないように歩きました。
特に難しい斜面などもなく、ナルマンダル峰の山頂に到着です。山頂にはケルンが一つ積んでありました。
写真はありませんが中国側、ロシア側も延々と山やU字谷、高原が続く絶景でした。
3国の国境が接する場所、しかも中国との国境ですからあまり長居はせずに下山開始です。
まずHCに戻りテントを撤収した後往路と同じルートでBCまで帰りました。
雪中&夜間行軍
(9/9)
地獄の一日の始まりです。
朝起きると予報通り雪が降っていました。僕たちは今日の早朝到着するというラクダを待っていたのですがそれらしきラクダは一向に来ません。まあ天気悪いしこんな日に働きたくない気持ちも分かるっちゃ分かるんだけども…
これ来ないやつだな、と考えBCにいた英語を話せるカザフ人に通訳を頼み、他の登山者と同行させてもらう形で何とかラクダを確保し大幅に遅れてBCを出発。
BCに至る道は二つあり、一般的に往路と帰路は異なる道を辿ることが多いようですが僕らは諸々の都合で行きと同じツァガーン・ゴルの国立公園ゲートへ向かいました。
行きと違いちゃんと休憩があってとても楽に歩けました。
特にトラブルなく15時少し前にゲートに到着。本日の行程はこれにて終了!・・・とはなりませんでした。
ここから地獄が始まったのです。
もともとの僕らの計画では今日はゲートでテント泊をし、翌日ウルギーに帰るはずでした。運転手もエージェントの旦那さんも英語をほとんど話せなかったのですが、どうやら彼らの素振りから判断するにすぐにここを出発してウルギーに帰るようでした。
うそだろ…??
ウルギーまで7時間はかかるんだぜ…???
しかし早く帰りたいのも事実、さっさと荷物を詰め込み出発しました。
出発から1時間後、Sが車に酔ってしまいました。帰りの方が雨で道が悪くなっていましたし、車はパンクを警戒して加減速を繰り返していたのも原因のひとつでしょう。
ともあれSにとってこの日は僕やM先輩以上に長く辛い一日となりました。
出発から4,5時間で日没を迎え、そのころにはずいぶんウルギーにも近づき道もだいぶ良くなって速度も出せるようになり安心してうとうとしていると運転手と旦那さんが言い争いを始め、車が停車しました。
言葉が通じないので最初何が起きているのか全く分からなかったのですがどうやら道に迷ったようです。
GPSで現在地を地図に表示させ運転手に見せたりして車は出発し、ほっとしてうとうとし始めるとまた道に迷いました。
行きの車でよく何も見ずに運転して迷わないなと感心していたのですがどうやら彼らは道を覚えているのではなく景色を覚えているから迷わなかったらしく、逆に暗くなって景色が見えなくなるとすぐに迷ってしまうようでした。
結局3回か4回ほど迷った末にようやくウルギーに到着。時刻は深夜の1時を回っており、結局ゲートから10時間もかかっての帰還となりました。
ほんとにしんどかった…
感想
目標のフィティン峰は登頂できませんでしたが日本では決して見ることのできない絶景や環境をたっぷり味わうことができ、ついでの観光もとても楽しめた海外遠征となりました。
山は、尾根や峰よりかは谷、特に氷河によって削られた広いU字谷のスケールが大きく、その中を歩くのが最高に楽しかったです。
また、氷河も危険ながらも日本の雪渓や氷河にはない開放感や静寂さがやみつきになりそうでした。
何より人が少ないのも良いポイントで、運が良ければ氷河を独り占めにできるのが最高だと思います。
自分の課題、改善点がいくつも見えたのと同時に自分が何を楽しいと感じるか、アウトドアのスタイルみたいなものが見えた登山となり、自分の成長にもつながったかなと思います。
ここからは需要があるかわかりませんが2,3点役に立ちそうな情報を載せておきます。
ここに載っていない情報はネットで検索するとフィティン峰に登った人のブログや登山記録がいくつか出てきますのでそちらを参考にされると良いと思います。
登山中の食糧計画
食糧は基本的にウルギーでそろいました。ウルギー市内にはどれも小さいもののかなりの数のスーパーマーケットがあり、どのスーパーにも生活用品(石鹸やマッチ、ライター、トイレットペーパーなど)から食料品が一通りそろっており、困ることはありませんでした。
炭水化物は小麦粉、米、パスタ類と一通りありました。米は日本の米とは決定的に味と香りと食感が違うので注意が必要です。
調味料に関して、コンソメとかは無いように見えましたが醤油は置いてありました。
甘いお菓子はスニッカーズやドライフルーツ、ナッツなどがそろっており行動食をウルギーで揃えるのも十分に可能でしょう。しょっぱい系のお菓子はほぼなかったのでそいうったものは日本からの持ち込みがベストでしょう。
生鮮食品は割高で、スーパーで量り売りをしていました。ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎなどの根菜が中心で、その他の野菜はキャベツ、トマト、キュウリ、パプリカくらいです。果物は割高ながらもそこそこ種類が充実していました。
今回の登山ではフィティンへのアタック時には日本から持ち込んだリフィルのカップ麺やカップメシシリーズ、粉末味噌汁などを食べ、BCでは現地で調達できたもので料理を作るという食糧計画を立てていました。
GPSデバイスと連絡手段について
圏外からの連絡手段兼GPSとしてGARMIN社の"inReach Mini"を使用しました。inReach Miniは簡単に言えばSOS送信機やGPSとして利用可能な位置情報付きの双方向衛星通信ができる小型のデバイスです。
今回の登山は一帯が完全に携帯電話の圏外でした。そういった場所でエージェントや家族などの関係者に状況を報告したり、遭難の際にスムーズに救助要請を出せたり、現在地の天気予報を受信できるこのデバイスは非常に有効でした。
詳しい機能などについてはこの記事がかなり詳しく解説しているので参考にどうぞ。
ただ使用していて個人的に思ったのは、GPSとして利用するならスマホのYAMAPやジオグラフィカ、登山向けのスマートウォッチで事足りますし、天気予報や日常的な連絡なら沢筋や相当な山奥でない限り携帯電話の圏内である日本では必要不可欠ではありませんし、緊急事態の時はそれココヘリで良くね?ということ。
このデバイスの強みが最大限発揮されるシーンは行程の大部分が携帯電話の圏外という環境なのかなと感じました。
(2022.9.11追記:沢登りなど、大半が圏外かつ危険性の高いアクティビティの際は非常に有効かもしれないです。)
なので今回の遠征では大活躍してくれました。
服装、装備
9月は普通に積雪があります。HCでは普通に氷点下10度ほどになりましたし、天候も安定していないので日本の厳冬期登山用の装備と、可能ならアバランチギアも持っていくのが無難でしょう。
今回の登山はガソリンストーブ(MSRのドラゴンフライ)を使用しました。ガソリンは3~4Lほど消費しました。ウルギーにはいくつもガソリンスタンドがありましたがストーブ用の缶への給油はできないらしく、ガソリンはエージェントから購入しました。
癖のある英語での会話のため正しい理解かは保証できませんが、BCで会ったガイド曰く、9月は積雪がある程度あるため逆にクレバスに落ちにくいが7月8月はクレバスを覆っている雪が薄いためヒドゥンクレバスに落ちやすい?とのことでした。油断は禁物です。
飯テロ
ウルギー初の飛行機の出発が遅れ、11日の昼頃にウランバートルに到着した後、14日の帰国まで各自自由行動で観光などしました。
ウランバートル観光はかなり楽しめましたがそのことについて書くと文字数がすごいことになりそうなので割愛して、美味しかったご飯の写真だけ載せることにします。(ウルギーで食べたごはんの写真も混ざっていますが…)
ジンギスカンとか大好きな人はきっとモンゴル料理は口に合うと思いますよ!
それでは今回はここまで!
最後まで見てくださりありがとうございました!
「天気の子」感想とちょっとした考察 ※ネタバレあり
新海誠監督の新作、「天気の子」を見終えた勢いでひとつ記事を書き、そのまま上映後すぐ映画館の近くにある書店で買った小説版「天気の子」を読了し、少し冷静になったところで猛烈にこの作品について語りたくなりました。もう、二回目観る前に書いちゃお!
なので何度か気づいたこと、感じたことからネタバレありで考察とか感想とか書いていこうと思います。
もうすでに本作品を鑑賞した方に、ふーんこういう解釈もあるのね、と見ていただけたらと思います。
ネタバレ満載なのでこれから劇場に行こうと思っている方、観に行こうか迷っている方は絶対に見てはいけません!
目次
「サユリを救うのか、世界を救うのかだ」
天気の子のストーリーは、設定は全く違うものの根幹の部分は監督の過去作品で言うならば「雲のむこう、約束の場所」と似ています。
「雲のむこう、約束の場所」では、サユリを目覚めさせると世界は並行世界に書き換わってしまうため、世界をとるのかサユリをとるのかという選択を迫られました。
結局「雲のむこう~」では多少の犠牲はあったもののサユリも救え、世界も滅びることはありませんでしたが、本作では主人公の帆高は最終的に天気の均衡を取り戻すのではなく、世界なんて狂ってても良い、と陽菜をとる選択をし、結果として雨は降り続け東京は水没しました。
王道の物語であれば狂った均衡は修正されて終わるでしょう。もし狂った均衡の修正と代償に大切なものが失われるなら両方を失わない方法を模索するはずです。
魔王によって世界が闇に飲まれるなら魔王を倒して世界を救う、実は魔王は過去からタイムスリップしてきた恋人の父で、倒すと恋人の存在が消えてしまうものの何だかんだ上手くいって世界も恋人も救われる。
今作のような物語であればそういった結末こそが王道でしょう。
天気の子はそういった王道が王道として好まれるゆえん、例えば観たときの爽快感みたいなものを描きませんでした。
今作では主人公たちは世界からすれば非合理的で正しくない選択をしました。「君の名は。」と同じく1人の女の子を救う、という構図ではありますが、前作では女の子を救うことが町民全員を救うこととほぼ同義であったのに対し、今作は一人を救うことと皆の幸せは対立関係にあったわけです。そしてその二つを両立する術を彼らは知らず、ご都合主義な奇跡も起きない世界でした。
だからこそ陽菜を選べば天気の均衡は狂ったままだと明確に理解しながらも陽菜が生きている世界を選ぶという帆高のあまりにもまっすぐな気持ちが尊いと感じました。
誰もが自分の気持ちにまっすぐに従ったクライマックス
陽菜は「お天気ビジネス」を通じて、晴れることで多くの人を笑顔にできることに喜びを感じ、それこそが自分の役目なのだと感じるようになります。その中でこの狂った天気の均衡を修正するにはその代償として自分が人柱にならなければならないことを知り、決めきれず帆高に「この雨が止んでほしいって思う?」と尋ねてしまいます。帆高はほとんど反射的にそれを肯定し、彼女は絶望や諦めとともに人柱になってしまいました。
帆高は陽菜が最も言ってほしかったであろう言葉を、彼女にもう一度会って伝えたい、彼女が自分のために願ってほしいと警察署から走り出します。
ここからクライマックスまで、登場人物の気持ちがぶつかり合う怒涛の展開です。
まず夏美。彼女は陽菜に天気の巫女は人柱だということを伝えてしまいました。その罪悪感からか彼女は帆高が陽菜を救うために走っていることを知るや否や帆高に言います。「乗って!」
このシーンが本作で一番良かったと思います。
次に須賀。劇中では断片的にしか語られない須賀の過去。自分は常識的で現実が見えている大人なんでね、というような態度で帆高を追い出し、廃ビルでも彼を引き留める行動をとる須賀ですが、最後の最後、どうしてもあの人に会いたいんだと叫ぶ帆高を助けてしまいます。娘なのか亡き妻なのか、どうしても会いたい人、一緒にいたい人の顔がその時彼の脳裏をよぎったのでしょうか。
それから凪。冷静というか子供らしくない態度を崩さなかった彼が、唯一の家族である姉のために顔をくしゃくしゃにして叫びました。
ついでに高井刑事。リーゼントの方ですね。(なんであんなゴキゲンなキャラデザになったんだろう…)言葉遣いも荒く、悪役っぽさすら漂う彼ですが、廃ビルのシーンで「撃たせないでくれよ」とつぶやいたことで彼は最初から最後までしっかり自分の信念に基づいて行動していたのだ、と印象が一変しました。もし言葉遣い通りの人間ならあのシーンでそういうことは言わないと思うのです。
そして帆高と陽菜。雲の上で帆高は、ホテルで伝えなければならなかったことを伝え、陽菜は一番言ってほしいことを、一番言ってほしかった人に言ってもらえたことで自分のために願うことができました。
じっれたさの表現なのか、帆高が線路を走るシーンに疾走感が無く、もう少し短くてもいいんじゃないか、描き方を工夫すれば良かったんじゃないかと思わなくもないですが、全体的に人物描写がとても良かったです。
人物描写といえば君の名は。は人物描写が比較的瀧と三葉に集中してなされているのに対し、今作では夏美や須賀もかなり丁寧に描かれている印象を受けました。さらに凪という弟の存在もかなり大きく、そういう意味で今作は君の名は。みたいな爽やか時々不穏の泣けるボーイミーツガールを期待して観に来た人が若干肩透かしを食らうんじゃないかなと思いました。
ラストシーンでの再会
クライマックス→数年後(再会)という構成が新海誠、とても多いですね(小説版を含めると)。この構成は小説版の言の葉の庭からはっきりと見られるので気に入っているのでしょうか。(劇場版では「会いに行こう」で終わりですが)
それとは別に今作は「君の名は。」の影響が色濃く見られました。モノローグの入れ方とか音楽の挿入のタイミングとか特にそれを強く感じ、それ自体は物語に良いテンポ感とか展開を与える演出で、実際君の名は。を初めて観たときは衝撃を受けたのですが、今作でと何かやると何だか前作と似てる感じだな、という印象になってしまうので少しここは工夫すべきなのではないかと思いました。モノローグを多用して物語のテンポをうまく整えるのは監督の十八番ですからそこは良いと思うのですが…
さて、帆高の二度目の上京から始まるラストシーンですが、水没した東京、それでもそれを受け入れ、そこに生き続ける人々、なんだかぐっときました。
ともあれ本題はそこではなく、「僕たちは大丈夫だ」という帆高の最後のセリフとその感情です。
小説版のあとがきを見る限りこのシーンはRADのよーじろーの楽曲から着想を得て作った、とのことですが、え???
僕はてっきりこのラストを観た時「秒速5センチメートル」の語り直しかなって思ったんだけど…
何となく腑に落ちない。
モノローグと挿入歌も相まって決して説明不足ではないんだけれども…
互いを強く強く求める男女
新海作品で決まって描かれるのは互い(あるいは誰かを)を強く強く求める男女です。恋愛とか、以前記事に書いたような孤独とか喪失とかそういった要素は作品の本質ではなく、誰かを求める感情の源泉となったりその過程にある要素なのかな、と今作を観ていてふと思いました。
陽菜のチョーカー
公開前、各予報や冒頭映像などを見ているとこのチョーカーは陽菜が初めて廃ビルで祈った時にはつけていなかったけどその後のシーンと思われるところでは必ずつけていることから天気の巫女としての象徴なのかと思っていました。
しかし物語の最序盤でこのチョーカーはもともと陽菜の母のものだったことが描写されていたため、天気の巫女の象徴なのだとしたら母の形見だという設定は何となく違和感を感じました。とすればこのチョーカーは何を表すものなのか。
終盤、陽菜が空から帰ってきた時のシーン、このチョーカーは外れていました。また、ラストシーン、フードを外した陽菜の首にこのチョーカーはありませんでした。(たぶんね)
だとすると母の形見であるチョーカーは、母を忘れられない陽菜は空の上(彼岸)で母に会うことで未練を断ち切った、みたいな母親に寄った表現のためのものなのでしょうか。それはあまりに微妙な解釈だなぁ…
となるとやはりチョーカーは天気の巫女の象徴で、空から帰るシーンで外れ、その後つけていないのは天気の巫女としての資格を失ったことを表現していて、チョーカーが母の形見であることが示されているのは巫女のなるきっかけが母だったから、という解釈が妥当なところかと思います。
あんまりしっくりこないんだけどね
好きなシーン
・夏美がいるシーン全般。
というか夏美が好き。キャラはもちろん年齢も一番近いし、何よりえっちだしね。
特に夏美がいる好きなシーンは原付でぶっ飛ばすところと、就活の愚痴をこぼした夏美に陽菜が「私は早く大人になりたい」というところ。後者のシーンはマジでぶっ刺さった。
・花火大会のシーン
ここは気合い入ってましたね!すごく良かったです。思えば今まで新海監督、花火のシーンて一度も描いたことなかった気がする。好きそうなのに、なんでだろ。
・ホテルのシーン
「神様、お願いです。これ以上僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください」
新海誠の作品に多く登場する、登場人物にとっての「完璧な瞬間」を見事に表した表現だと思います。君の名は。のカタワレドキ、言の葉の庭の天気雨のシーン、秒速5センチメートルの桜の木の下のシーンなど、ああ監督はこの「完璧な瞬間」をそう表現したのか、とちょっと胸が熱くなりました。
さて、今回はこの辺で。また気が向いたらまた何か書くと思います。
最後に、正直なところ「天気の子」には個人的にすごく良かったなと思った「君の名は。」や「言の葉の庭」よりも不満点が多かったです。(ちなみに一番好きなのは雲のむこう、約束の場所)というのも作品が「君の名は。」の影響を受けていると強く感じたからです。もちろん作品をより良いものとして完成させるため、という良い意味での影響が多かったでしょうが若干、悪い影響の受け方をしている部分があるような気がしてなりません。
いちファンとして、新海監督が僕に刺さる作品を作り続ける限り今後も応援していきます。周りの声を創作の糧にし、どこまでもご自身の世界を表現してくださることを願っています。
「天気の子」を観てきた。確かに賛否は分かれると感じた。
ひとまず、ネタバレなしで感想を書いてみようと思う。
ただ、内容をそのまま書きはしませんが、予想させてしまうかもしれないようなことは書くので予めご了承ください。いやそれをネタバレって言うんだよ
とにかく、まっさらな気持ちで作品を楽しむ予定の方はあんまり見ない方がいいかもってこと
※7月20日、加筆修正しました
さて、今作「天気の子」は新海誠が「君の名は。」で大ヒットし、多くの人に認知されてから初めてとなる作品です。すなわち、今までとは比べ物にならないくらいの期待と注目を背負って制作されている、ということです。ただ、その点に関しては既にメディアのインタビューで監督自身が語っているように、そういったことに縛られ過ぎず描きたいものをとことん追求しているようですし、実際に鑑賞してみて、監督の描きたいもの、テーマ、軸みたいなものはブレていない作品だと感じました。
そして感じたのは(これは事前に監督がインタビューなどで語っていたことだから多分ネタバレには当たらないと思うけど)監督はどこまでも「互いを強く強く求め合う男女」を描こうとしているんだろうなと感じました。僕が以前書いた記事で監督の作品に共通するテーマは喪失とか孤独、そしてそれを乗り越えたり受け入れようとする人々だと語りましたが、どうも一番描こうとしているのは互いを強く求め合う男女であり、喪失とか孤独とか、そういうものはそれを書く中でも要素の一つに過ぎないのではないかと感じました。
細かい内容はさておき、まずはざっくりと語っていこうかと思います。
まず、「天気の子」はどんな感じの作品なのか、について。
簡単に言うと、君の名は。とは少し毛色の違う物語です。
確かに君の名は、と同じエンタメ作品に仕上がっていますが、でも明らかに違うのであれっ、って思うはずです。
ゆえに君の名は。みたいな物語を期待して観に行った人ががっかりして帰ってきてしまわないか少し心配です。少なくとも前作ほどの異例の大ヒットにはならないんじゃないかな、と思います。それは天気の子が間違いなく賛否両論分かれるような物語だからで、でも僕は監督が安易に人気を求めて大衆迎合に走らなかったことが嬉しいです。
まあ、パンフレットの新海誠の記事を見る限り、ものごとはそう単純ではないようですが…
作りたいものを押し殺して批判が出ないような作品を作るべきか、それとも自身の思いを反映させた、作家性の強い作品を作っていくべきか。
結論は「より批判されるものを作ろう」という強い思いだった。
新海監督が描こうとしたものを描き切ったであろう「天気の子」、賛否両論分かれることは必至でしょうし、内容に関しても、前までの方が良かったんじゃないか、もっとこうした方がおもしろかったんじゃないかと思う点はいくつかありますが、劇場に行って観る価値は十分にあると思います。
もちろん、誰の心にも刺さる作品ではないわけですから、満足できるかどうかは見る人次第です。ただ逆に言えば誰かにとってはぶっ刺さり、その人のその後の人生に大きく影響を与えるものであれば、どんな作品でも名作だと言えると思います。
「天気の子」は、まだまだ成長していくであろう新海誠の、その途上にある作品だと感じました。
次にすこし細かいところの感想を。
まず、新海誠の代名詞ともいえる風景描写。何気ない東京の風景を美しく描き出し、日常の美しさを僕たちに気づかせてくれるのは過去作品と変わらず健在です。
「言の葉の庭」辺りから風景が異様なほどリアルに美しく描かれるようになり、細かい映像技術がどうのとかは僕なんかには進化を見て取ることができませんが(正直頭打ち状態に感じられる)(7月20日追記:アマプラで言の葉の庭を久しぶりに観ました。頭打ちなんてとんでもない、明らかに天気の子の方が映像がきれいでした。どこまで行くんだ新海誠)、今回は「雲研究家」の荒木健太郎さんが監修するなど、よりリアルな気象描写が楽しめるのでないかと思います。
しかし、ただリアルなのかというとそうではありません。
予告編やあらすじをご覧になればわかるように今作もSF(少し不思議)系の作品です。それにふさわしく劇中では「現実ではあり得ない現象」を多く描写されます。
今作では前作以上にリアルと虚構を上手く融合させた美しい風景描写が楽しめると思います。
次に人物描写について。過去のどの作品よりも、各登場人物に強い想いが溢れていると感じました。また、同時に非常にリアルだな、とも感じました。
正しいだけじゃない、美しいだけじゃない、ズルく暗い部分もある人の感情がしっかり描かれていました。
ストーリーについて。これ直接的なネタバレなしで書くのはすごく難しいな。でも、「君の名は。」よりもセオリーから外れた展開だなと感じました。登場人物の行動や東京の情景描写に限らずストーリー自体も賛否両論の対象になりそう。
でも、爽やかでワクワクできて、でも時折胸が締め付けられるような感情に襲われる、そんな物語でした。
考察とかはネタバレなしに語ることが難しいのでもう一回劇場でじっくり観てからゆっくり書こうと思います。
何はともあれ、本作は高い完成度と新海誠らしさがしっかり味わえる名作です。あなたにとって刺さるか刺さらないか、面白いと思うか思わないかは観てみないとわからないです。ぜひ、劇場へ足を運んでみては如何でしょうか?
最後に、僕の素直な感想を。
思ってた方向性とは少し違ったけど、想いと想いのぶつかり合う良い物語だったし、なにより本田翼が演じる夏美がマジで最高だった。
ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!
今回はここまで!最後まで読んでくださりありがとうございました!
「天気の子」が楽しみ過ぎて夜も眠れない
※今回の記事も本ブログの趣旨を逸脱した内容となります。マジで輪にかけて自己満足。だけどそんなこと知ったことか。俺は書くぞ
さて、新海誠最新作「天気の子」、スペシャル予報が公開されました。
これはマジで激アツ
前半の新海誠の過去作品の動画は新海誠展のラストで流れていたクロージングムービーの編集版で、後半は天気の子の冒頭映像と新たに公開されたシーンを組み合わせた予告編ですね。
特に前半の過去作品の映像は、新海誠作品を愛するすべての人の胸を熱くさせたのではないかと思います。正直後半より良かった。
過去作品すべてがひとつの流れの中にあるのではないかと思わせるような動画の経て、各作品のメインの二人が互いの名前を呼びあうシーンでグッときて、続けざまに来る出会いや離別、登場人物が心を通わせるシーンと各セリフの組み合わせでもういっぱいいっぱいになってう~~~~ん、いっぱいちゅき~~~~~♥♥
こうしてみると、新海誠の作品の共通点というか、新海誠が共通して描きたかったものが何だかわかったような気がします。
それはおそらくは”喪失”もしくは”すれ違い”や”孤独”という誰もが経験するどうしようもないことを乗り越え、あるいは受け入れようと不器用にもがくひとの姿なのではないかと思います。(一つに絞れなかった笑)
「ほしのこえ」はあまりに説明不足過ぎてミカコとノボルのすれ違いや孤独そのものしか描写されていないように見えますがラストわずかに入るカットから、ミカコは生きていることが予測されますし、ノボルは艦隊勤務になる描写があるので死んでしまったかもしれないミカコを、ノボルは待つだけでなく一縷の望みをかけて救出しに向かおうとしていることが伺えます。
正直この作品最後に見たのずいぶん昔だからあんまり覚えてないや笑
「雲のむこう、約束の場所」では、サユリの失踪を機にヒロキとタクヤは”約束の場所”を目指す動機を一度失うものの、ヒロキは再度”約束”を果たしサユリを取り戻すために行動を始めています。しかしその結果サユリは”夢”の中でヒロキに抱いていた気持ちを失い、ヒロキは約束の場所を犠牲に取り戻したはずのサユリを失い、タクヤは自分を突き動かしていたすべてを失い、それでも”約束の場所を無くした世界で、これから僕たちは生き始める”、そういうことを描きたかったんじゃないかな。
説明不足感がすごいけど本当に好きな作品。小説版もめちゃオススメ
「秒速5センチメートル」は、初めて、唯一心が通じ合ったと確信できる初恋の女の子といつの間にか音信不通になってしまい、その影を引きずりながら青年期を過ごし、社会人になったタカキがアカリに踏切ですれ違うという些細な奇跡を経て、ようやく前に進み始める、というなんだかんだ言ってポジティブな物語なのです。
良いか、何度も言うけどこの作品は鬱アニメじゃないからね??????
「星を追う子ども」はわかりやすいです。アスナとシンはシュンを失い、先生は最愛の妻を失い、旅の果てに結局誰一人として失ったものを取り戻すことはできなかったけれど、それでも3人ともそれぞれ自分の道を進み始めるという物語です。
え、ジブリで良くね?ってなるからあんまり好きじゃないけどコミック版は原作の良くないところを結構改良してて結構面白いからおすすめ
「言の葉の庭」は、大人であろうと必死で頑張っているけれど全然うまくできない雪野先生と、早く大人になりたいともがく孝雄、孤独な二人が雨の庭で逢瀬を重ね雪野は孝雄の目的となり、孝雄は雪野の救いになる中でなんだかんだ前に進む話。
映画も良いけどこれは本当に小説版が面白い。
「君の名は。」も突然エンタメ感が増して新海誠独特の雰囲気は薄れたように感じますが、喪失やすれ違いとそれを乗り越える姿はきちんと描写されていて、二人の間にはただの田舎と都会という空間性だけでなく3年間という時間的な断絶があったという展開、三葉の死を知った瀧が何とか彼女を救おうと奔走するという描写、またその後三葉を救えたものの、瀧も三葉もそれほどまでに大切なお互いのことを否応なく忘れてしまうが奇跡的に再会する(しかし恐らく二人は再会後もカタワレドキにピークを迎えた互いのかつての関係性を取り戻すことはできない)という描写に現れています。胸を締め付けられるようなこの感覚はやっぱり新海誠作品だよな、ジブリじゃあ、こうはいかねえよなぁ?と、そういう作品なんだと思います。
「天気の子」では主人公の二人がいったい何を失い、あるいはどのようにすれ違い、そしてどのようにそれに向き合うのでしょうか。今から本当に楽しみで仕方ありません。
前回も書いたような気がするけど、思いっきり笑えて、手に汗握るくらいハラハラできて、胸がギュッと締め付けられるような切ない映画になってほしいと思います。
10000回は劇場に観に行きたい気分
あと、冒頭映像見てて思ったけど、この時の陽菜、チョーカーつけてないんだね。
予告編中妙にキラキラしてるからこのチョーカーの雫みたいなやつ、重要なファクターになりそう。君の名は。の組紐みたいなポジション(明察)
北アルプス最奥の山と温泉に行った時の話 後編 【高天原温泉】
続きです。
目次
3日目 雲ノ平散策ー高天原(温泉と夢ノ平でまったり)
この日は全体的にハードな行程の中で唯一のんびりできる日です。
雲ノ平散策して、高天原に降りて終了!って感じです。
まずは祖母岳に登ります。まっ平らなような雲ノ平ですが意外とアップダウンがあります。祖母岳はその中の一つで、山というより丘って感じです。
次はスイス庭園に向かいます。途中でライチョウの親子を発見。ライチョウって曇ってるときにしか出てこないってよく言われますけど快晴の時でもめっちゃ出てくる。
野生動物としての危機感ですとか、絶滅危惧種としての自覚が足らないんじゃないですか!!???どうなんですか!!!????その辺どうお考えですか?????
と、インタビューをしてみたらその愛らしい姿からは想像もつかない汚い鳴き声で返事をされました。まったくお話になりませんね。
スイス庭園からは高天原方面を一望できます。
この展望台は最高(この写真だけ加工しちゃったテヘペロ)
開けた湿原の隣にひっそりと建つのはランプの宿、高天原山荘です。
発電機をあえて設置していないため、この小屋の証明はランプのみなのだそうです。
ここにはテント場はないので今日はこの小屋に泊まります。大奮発して夕食付です!
ここに電話は通じないので予約は太郎小屋経由でするようです。
チェックインして荷物を寝床に置いた後、温泉に向かいます。山で温泉に入れるなんて最高過ぎる!!!!
でもまずは温泉の奥にある夢ノ平に向かいます。
思っているより遠いので本当にこの先にあるのか不安になった頃、目の前が急に開けます。
夢ノ平に到着です。
右手の踏み跡を辿ると竜晶池に出ます。
見てくれよ・・・・最高だろ???
静かな森に囲まれた平らな水面に映る木々と真っ青な空、ここは完成された空間でした。温泉からここに至るまでの道のりも、まるでこんな開けた空間があるとはとても思えないような様子でしたから感動もひとしおです。
さらに奥にはこじんまりした池塘があります。ワタスゲがもしゃっと生えていました。
田んぼみたい湿性植物が可愛いですね
ここで一日うとうとしてぇ~
夢ノ平から先に登山道はなく、どこにも行けません。温泉からの登山道の様子からしてここに来る登山者はあまり多くないのでしょう。
さてお次はお待ちかねの高天原温泉です!
日焼けがえぐいので涙が出るほど沁みましたが極楽です。痛みと快楽は紙一重ってね。
高天原温泉は3つの湯舟があり、二つがそれぞれ囲いのあって男湯と女湯に分かれていますが、せっかくの最奥の温泉なのですからこの囲いのない湯舟で入浴しました。開放感がたまんねぇです。
露天風呂の脇を沢が流れています。温泉でのぼせたらこの沢で水浴びしましょう。キンキンに冷えていて目が覚めます。
ちょうど人がいなかったのでずいぶん長いこと満喫できました。あとは高天原山荘でひたすらダラダラします。
わざわざ担ぎ上げてきた「黒部の山賊」をここで読了しました。
高天原はまさに地上の楽園でした。
昼間から解放的な温泉に浸かり山と自然を愛でながら読書と酒に興じることほどの精神的な贅沢はないでしょう。
また来たいです。
4日目 高天原~大東新道~薬師沢小屋~太郎小屋~折立
朝食は自炊です。ササっと食べてササっと高天原を後にします。
下山路は雲ノ平経由ではなく高天原峠から薬師沢へ黒部川沿いを抜ける大東新道です。「新道」というだけで勘の良い方はどんな道か察しがついたかと思いますが、それほど整備されていない道です。ルートの大部分が黒部の深い谷の中にあるので増水すれば通行不能ですし増水後はルートが変わっている可能性が高いという道ですので、通行の際は近隣の山小屋の方に確認したうえで通行しましょう。
最初は高天原峠から延々とトラバースしていきます。黒部川沿いではないですが沢をトラバースする箇所が多く、増水時にはとても歩きたくないところです。そのうえ、えげつない量の蚊の襲来を受け、ストレスがたまりました。
ようやく黒部川と合流です。ここからずっと沢沿いの道を歩くことになります。
沢登りをしてみたくなります。すごく気持ちがよいです。
昇天待ったなし
とても歩きやすいとは言えませんでしたが本当に心地の良い道でした。
ようやく薬師沢小屋に到達
たのしかった!
ここまで来たらもう安心、かと思いきや、太郎小屋までの登り返しが本当にきつかった…
ヒーヒー言いながら太郎小屋に到着。これで後はほとんど下りです。
ほぼ気力だけで折立まで降りました。(写真は一枚もない)
感想
ずっと行きたかった場所に行けて、見たかったものを見れたので本当に満足です。
赤牛岳はもうしばらく行く気にはなれないですが、高天原はまた行きたいです。それほど素晴らしい場所でした。
大東新道は沢沿いの登山道が気持ちよくて、沢登りに挑戦してみたくなりました。
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました!
それではまた
北アルプス最奥の山と温泉に行った時の話 前編 【赤牛岳】
手元にバイクも登山用品もゲーム機もないのでどう憂さ晴らしをしたものかと考え、記事を書くことにしました。
せっかくなので去年一番楽しかった登山について書くことにします。
目次
ルート概要
折立から入り、日本最後の秘境とか言われる雲ノ平経由で北アルプス最奥とか言われる赤牛岳に行き、日本で一番遠い温泉とか言われる高天原温泉に入って折立に降りるコースです。
めっちゃ楽しそうでしょ?
めっちゃ楽しかったわ。
そしてなんと驚き、この登山は同行者がいます。同期のKと後輩のYです。
友達、いるんすよ。
詳細は以下の通り
1日目
折立ー太郎平ー薬師沢小屋ー雲ノ平(テント泊)
2日目
3日目
雲ノ平散策ー高天原(小屋泊)
4日目
高天原ー大東新道ー薬師沢小屋ー太郎平ー折立
※注意:このスケジュールはコースタイムよりかなり早いペースで歩くことを前提に組んでいます。初心者や体力に自信のない方、ブランクのある方は絶対に参考にせず余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
僕とKの強いこだわりで、温泉と赤牛岳は絶対に行きたかったのですが授業の関係上4日間しか休みが確保できないため、上記のようなきつめのスケジュールを組みました。
3日目はゆる~いスケジュールを組み、ゆっくり温泉を楽しむという寸法です。
1日目 地獄の薬師沢~雲ノ平の直登
初日の早朝、Kの車に乗って折立に向かいます。
この日は通常2日かけて行くべき雲ノ平まで行かねばならないのでできるだけ早く折立に到着しなければならないのですが、折立に至る有峰林道は夜間や早朝は利用できないので出発時間はあまり早く設定できません。
なので食料を軽量化(なんと大奮発して食事を全部アルファ米にして、3日目の夕食は小屋の夕食を食べることにしました!)し、いつもどっさり持っていく酒なども最小限に抑えました。
さて、折立に到着するとできる限り早く準備をし、登山開始です。今日の最大の鬼門は薬師沢小屋から雲ノ平に至る、標高差450mの何の変化も展望もない急登です。
天気は薄曇りなものの、向かって左手にくっきりと薬師岳の雄大な山容が広がっていて気持ちが良いです。
あまり調子は上がらないもののなんとか薬師沢小屋に到着です。(写真は出発した後に撮ったやつだけど)沢の合流地点にある小屋で、すごく気持ちのいいところです。稜線に建ってる山小屋とは少し違った山小屋感があってすこ。
小屋の前のデッキからつり橋を渡り、すぐに急登が始まります。時刻はほぼ予定通り、この先の急登でバテなければ余裕を持って雲ノ平山荘に到着できるでしょう。
急登はペースを崩したくなかったので写真なしです笑
急登は無になって登り、木道末端からアラスカ庭園までの案外長い道を歩きました。
ここが「日本最後の秘境」と呼ばれる雲ノ平の端っこです。
ここから意外と微妙なアップダウンのある雲ノ平を歩き、山荘へ向かいます。
雲ノ平、めっちゃ楽しいし景色も割と良いので撮影がはかどるのですが、今回は足に結構疲労が溜まっているのと明後日に散策タイムを設けているので撮影もそこそこに山荘を目指します。
雲ノ平山荘が見えてきました。
つかれた~
雲ノ平山荘の食堂。食堂に限らず雲ノ平山荘は全体的におしゃれです。
食堂のラストオーダー前だったので奮発しておやつを食べることにしました。
ごろっとお肉が入っていて最高~~~~
疲れも吹き飛ぶ美味しさです。
3人で涙を流しながら食べました。
その後少し離れたテント場に移動し、幕営して夕食です。
アルファ米を食ったあと、きのことベーコンを炒めたやつを食べました。
食後に後輩のYがモンベルの野点セットを使ってお茶を点ててくれました。
苦くてたまらんうまい~~~
雲ノ平のテント場は石がごろごろしているため広いですが見た目より幕営できる場所が少ない感じです。電波はドコモでも届きません。ラジオも届きにくかった記憶があります。
コースタイム通りだとどの登山口からも1日で到達できないところにあるので金曜日とはいえそんなに混んでないだろうと思っていたのですが、16:00を過ぎても次々に登山者がやってきて、18:00ごろには割と埋まっていました。真夏とはいえ18:00過ぎに到着して幕営している人が何人もいたのは結構驚きました。事故に合わないと良いのですが・・・。
2日目 雲ノ平ー赤牛岳 地獄のド快晴ピストン
この日はテントは張りっぱなしにしてサブザックで赤牛岳を目指します。
赤牛岳は「北アルプス最奥の山」と呼ばれる山で、北アルプスの主要な縦走路から外れた稜線にあるため人が少なく静かで広大な山が楽しめる場所だそうです。
Kと前年に行く予定だったのですが天気が悪そうだったので延期して今年が初のチャレンジとなるのですごく楽しみです。
水晶小屋に到着です。この小屋もすごい山小屋感あって好きです。
さて、ここからが地獄みたいに長い稜線です。赤牛岳までコースタイムで往復6時間、その間一切山小屋はありませんし、水晶岳から向こうにはほとんど登山者が歩いていないことが予想されます。
ピーカンです。雨だったり雲の中を歩くよりかはマシかもしれないですが、僕は思うんですよ、
快晴って正直飽きませんか?????
目の前に広がる絶景、最初は最高じゃ~んと写真を撮りまくり景色を堪能するのですが、しばらくすると絶景に飽きるというか感覚が麻痺してきてしまいます。
ガスのなかを歩いて一瞬視界が開けるとか、目の前にそびえる峰に被っていた雲が一瞬晴れるとか、そういうのの方が楽しくないですか…?
ようやく温泉沢の頭です。写真中央の赤っぽいのが赤牛岳です。クソ暑いのでこのまま高天原まで降りて温泉はいらない?とKが提案しましたが温泉は明日までお預けです。
ヒーヒー言いながら静かな稜線を歩きます。
この稜線は北アルプスの主要な縦走路から外れていますし、赤牛岳は100名山でもないので連休だというのに登山者はほとんどいません。
静かな稜線歩きを満喫したいのであればかなりおすすめです。
道中の写真がほとんどないのは察してください。飽きたんです。
何はともあれ、北アルプス最奥の峰、赤牛岳に登頂です。
長かった~~~(帰りも長いけどね)
ちなみに、北アルプス最奥と言われるこの山でもスマホの電波がわずかに届いていました。ロマンが足りねぇ~~
帰ります。
赤牛岳周辺は赤茶けた砂礫に覆われていました。
このサイトの赤牛岳関連の記事を読んでからずっと行ってみたかった赤牛岳についに登頂できて感無量です。
景色はどこを撮っても最高です。全体的に穏やかな山容ですね。
帰ってきました。帰りの写真が極端に少ないのは以下略
それにしても、な、ながかった…
結局終日良い天気でした。滅茶苦茶日焼けしました。
この日の夜はアルファ米にサバをぶち込んで食いました。おいしかったです。(見た目が悪いので写真は撮りませんでした。)
今回はここまでです。ここまで読んでくださってありがとうございました!
後編は
・雲ノ平を散策
・高天原温泉&湿原でまったり
・プチ沢登り気分の大東新道
って感じです。
次回もよろしくお願いします!
更新できるのはしばらく後になりそうですが…
脳汁ドバドバさせながらお山に登りたいの~【登山時の飲み物】
登山の楽しみ方は人それぞれ。
GWに鹿島槍に登った時、僕は冷池山荘で新しい楽しみ方を見出しました。
その時僕たちは入山からまる3日目でした。食事は軽量化と安さを求めて夕食はすべてリフィルのカップラーメン、朝食はカレーメシにしており、圧倒的に栄養バランスに欠けた食糧計画でした。
そのため体はビタミン的なやつを求めていたのだと思います。野菜的なやつをね。
そこでGW中営業している冷池山荘の売店で僕は運命の出会いを果たしました。
そう、賞味期限切れの「Qooみかん(280ml)」です。
おそらく昨シーズン中に売れ残り小屋で越冬したものでしょう、300円のところ150円で販売していたのでケチで貧乏な僕はまんまとこいつを買ってしまったわけです。
もし下界の僕なら絶対に買わない。ポンジュースの方が明らかにおいしいもん。バカ舌の僕でもわかる。
だから、まあスポドリに飽きたので飲んでみようかなってくらいの気持ちで、グイっといったわけですよ。
昇天しました。
体はビタミン的なフルーツ的なアレの供給を受けて歓喜に打ち震え、全身の細胞が潤い、更なるQooを求めているのがわかりました。
今までの人生で飲んだジュースの中で一番うまかったかもしれん。
と、このような経験をして、僕は思ったわけです。
色んな飲み物で昇天してぇ~~~~~~~
ってね。
さて本題です。皆さん登山の時、何を飲んで昇天してますか?
頑張れば水とかスポドリ飲んでも昇天できますけど、やっぱりスポドリで昇天できるひと、少ないですよね。
だからテント場に着いたら、余裕があれば休憩中とかでもスーパーで売っているような粉末のコーヒーだとかミルクティーだとかココアだとかを水で溶かして昇天しています。
でもやっぱり手軽に昇天するためにはフルーツ系のジュースか炭酸飲料が一番なんじゃないかって思うんです。如何せんココアとかコーヒーには爽やかさが足りないです。
ところがジュースってココアとかと違ってなぜか粉末で売っていません。青汁みたいなのを粉末にする暇があるならポンジュースを粉末にしろ。
ペットボトルのジュースを持っていけばいいのですが重たいし嫌だな~と思ってAmazonを調べていたら普通にありました、粉末ジュース。
サングリア、って書いてあっるので一瞬
粉末の酒???????????????(世紀の大発見)(アル中歓喜)
ってめっちゃ興奮したんですけどノンアルでサングリアっぽい味に仕上げたやつみたい。
残念ながらオレンジ味はないようですが、美味しそうだし今度の登山で試してみることにします。
次回
粉末ジュースで昇天できるのか??
乞うご期待!!!!!
ちなみに粉末ではないですが比較的軽量になる希釈用のジュースもAmazonには売っています。これは飲んだことありますが滅茶苦茶うまい。
くっそべたべたになるけど