山とバイクと一人旅

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登山自粛について思うこと

新型コロナウィルスの蔓延に伴う不急不要の外出自粛が続いています。登山界隈も例外ではなく、登山自粛が叫ばれています。

登山自粛の主張は以下の二つに分類されるように思われます。

少なくともネット上で現在みられる意見としては②が主流であると感じます。

 

①アウトドアでも条件によって感染リスクが高まる状況が発生するという主張

・山小屋で3密が発生し得る(複数人でのテント泊でも同様)し、感染対策がしにくい

・移動の際やコンビニなどの施設の利用でウィルスを拡散してしまう

・混雑した登山道では人と人との十分な距離を維持できない

→登山者同士はもちろん、山小屋関係や交通機関、地元住民への感染のリスクがある

この主張に基づけば、ソロかつ人の少ない山域で、登山口まで自家用車でアクセスし、行きと帰りにどこにも寄らないのであれば登山を自粛する必要はありません。

 

②登山行動そのものが医療現場や救助隊に不要な負担をかけるリスクがあるという主張

・事故発生時に、コロナで逼迫している医療現場に不要な負担をかけることになる

・遭難者がコロナに感染していた場合、救助活動を行った関係者が隔離されることになり、救助隊の機能不全につながる

→以上の事態が発生すると今後の登山界隈に禍根が残る

同様の考えはマリンスポーツやバイク界隈でも散見されます。

この主張をしている人はさらに二分できます。片方はリスクの低い登山やハイキングなら良いだろうという考えの人たち、もう片方は登山に絶対安全などないのだからすべて自粛すべきという考えの人たち。

 

 

②の主張が一気に強くなったのは以下の記事が拡散されてからであるように思います。

 

3pomichi.com

 

で、4月25日にあわやこのカナダと同様の事態が発生しかけました。

 

www.shinmai.co.jp

 

そのためより一層強い登山自粛論が声高に叫ばれるようになっています。

 そして、この遭難男性はもとい、登山をしている人への攻撃もじわじわ始まっています。

 

さて、ここであらかじめ僕の意見を述べておきますが、僕は登山自粛に賛成です。(②の主張のすべてに同意見というわけではないですが)3月頭から登山は行っていませんし、今後もコロナが落ち着くまで登山はしません。もともとインドア人間だから僕は苦ではありませんから。

 

ただ、僕は登山やその他アウトドアをすべて自粛すべきだとは、決して思いません

各種施設を使用せず、自家用車を利用して、1人で、比較的リスクの低い山域やコースを無理のない状況で歩くのであれば許されると考えています。批判の対象にはなるべきでないと思います。

 

いえ、そもそも許す許されないの問題なのでしょうか?

 

法で規制されていないのであればすべての行動は行動する本人のモラルに依存するはずです。コロナ蔓延に伴う現在の状況では、個人の自由な行動が制限されることはやむを得ないでしょう。ですがその行動を制限すべきは法や政府であって決して個人やメディアではないのです。

人が人の行動を、自由を制限するという構造は悪い相互監視の在り方です。それは感情に飲み込まれたリンチへと発展し得る危険性をはらんでいます。

 

 

さて、現在散見される登山はすべて自粛、という考え方に則って考えてみましょう。(無論この考え方自体に善いも悪いもなく、問題なのはそれを過剰に人に押し付けようとしている人たちなのですが)

リスクの低い登山ですら自粛すべきなら、少しでも危険の伴う行動はすべて自粛すべきということになります。

 

では、例えば、自宅待機に限界を迎えた子供を連れて、あらゆる感染対策を講じたうえで出かけるレジャーは、家に籠っている場合と比べて交通事故リスクが上がるから自粛すべきですか?

あるいはストレス解消に近所の穴場な海岸や河原に出かけて水遊びをするのも水難事故のリスクがあるから自粛すべきですか?

 

そういうことじゃない、それは精神や肉体を健全に保つために必要な行動だ、という反論があるでしょう。しかし、詭弁に聞こえるでしょうがそれはあなたの価値観、あなたの線引きでしかない可能性は捨てきれないのです。

 

自分の価値観が絶対に正しいと思い込み、それに沿わない他人の行動の裏にどんな事情があるかも想像しない態度というのは非常に危険です。

また、例え他人の行動がどう見ても自分勝手な行動であったとしてもそれが誰かを袋叩きにすることを正当化する理由になどなりはしないのです。

そんな正義などありません。

 

 

今回阿弥陀で事故った方にどんな事情があって登山を決行したのかは存じませんが、きっと猛反省しているし、身内や周囲もコロナが収まるまで行かせないでしょう。

それでいいじゃないですか。

今回起きなかった最悪の事態を何としてでも防ごうというのは分かりますが、それが事故った人や登山をしている人を叩くことに繋がるのは行き過ぎなのではないでしょうか。

 

 

我々がすべきは、しかし身内や近しい人がリスクの高い登山やアウトドアアクティビティをしようとしていたら事情を訊いて、止めるべきであれば止める程度のことではないでしょうか。

登山自粛を啓発するのも必要なことでしょう。ただ、決して自分が正義であると勘違いして暴走しないように

 

 

ここまで読んでくださりありがとうございました。

一刻も早いパンデミックの終息を祈り、できることをしていきましょう。

 

最後に、この記事には現在の状況下での登山を推奨する意図は一切ありませんのでご了承ください。