山とバイクと一人旅

脳みそが痺れるような景色が見たい

フィティン峰を目指して【Mt.Khuiten】

モンゴル最高峰Mt.khuiten(フィティン峰)を目指し登山してきました!

目標のフィティン峰はアルタイ山脈に属するタバンボグド連山の標高4374mの山で、モンゴル最高峰でもあります。

その山を目指して、2019年9月に海外登山をしてきました。

 

目次

 

日程

9/1 成田空港→チンギスハーン国際空港(ウランバートル

9/2 チンギスハーン国際空港→ウルギー空港(ウルギー市内にて買い出し)

9/3 ウルギー→タバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)

9/4 ゲート→BC

9/5 BC→Mt.Malchin→BC

9/6 BC→HC

9/7 HC停滞

9/8 HC→Mt.Nairmandal→HC→BC

9/9 BC→タバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)→ウルギー

9/10 ウルギー滞在

9/11 ウルギー→ウランバートル

9/12~13 観光

9/14 チンギスハーン国際空港→成田空港

 

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ルート概要、地形図はgoogleから。GPSログは諸般の事情により載せられないので手書きでトレースしたものです。

 

日本→ウルギー

(9/1)

今回の登山のメンバーはM先輩と同期のS、そして僕の3人です。

1日に成田空港にて集合し、いよいよモンゴルへ!

 

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多少出発が遅れウランバートルのチンギスハーン国際空港に到着するころにはすっかり夜になっていました。

 

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 (9/2)

ウルギー行きの国内線はチンギスハーン国際空港を早朝出発するので、この日は早起きして手続きを済ませました。

荷物は預け10㎏、持ち込み5㎏で、両方ともまとめて計量し15㎏を超過した分の超過料金を支払いました。超過料金はモンゴルの通貨で4000Tg(トゥグルグ)/1kgとかなり安かったです。

ウルギーまでは小型ジェットだったのであっという間に到着しました。1本しかない滑走路は事前情報とは異なり綺麗に舗装されていて、良かったような少し残念なような…

 

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異国情緒満点なウルギー空港

ウルギーに到着後、今回お世話になるエージェントの家に行き、諸々打ち合わせしたのちに本日の宿へ向かいます。ウルギーは小さい町ですがそれでも徒歩で移動するには広いのでエージェントの旦那さんに送迎をお願いしました。

 

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ウルギーでの宿。別棟に水洗トイレ、温水シャワーがありました。

宿にチェックインしたのち、ウルギー市街地を観光がてら買い出しをします。

ウルギーは地理的にはモンゴルの西の果ての街ですが見た目のこじんまり具合とは裏腹にかなり栄えている印象を受けました。街はずれも街中もどちらもあちこちで工事していたので10年後には大きく変わってしまうんだろうな。

 

食事をとり買い出しを終えると後は自由行動なので軽く散歩をして翌日に備えます。

 

ウルギー→BC

(9/3)

エージェントの旦那さんとガイドのドライバーに8:00頃迎えに来てもらい、タバンボグド国立公園ゲートまで移動しました。

 

てっきりUAZで移動するのかと思いきややってきた車はランドローバー。決して車高の低い車ではありませんが、荒れた未舗装路の前には無力でした。

 

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最初のうちはこんな感じの砂漠地帯を走りました

ウルギーを出て4,5時間ほどはかなり走りやすいダートだったのですが、モレーンが出てきた辺りから道はガタガタのボコボコになりました。

マフラーは外れるわパンクはするわでゲートまで8時間強かかりました。

 

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やっとの思いでタバンボグド国立公園ゲート(ツァガーン・ゴル)に到着し、ゲートに駐在している人に身分証明書(パスポート)を見せ、テントを張りました。

 

(9/4)

この日は朝から雨でした。

10時にラクダが来て出発する約束でしたが時間を過ぎても来なかったためエージェントの旦那さんが催促に行き、11時頃やっと出発できました。

 

この行程がなかなかにきつかった正直今回の遠征で2番目にきつかったと思います。(1番目がいつだったかはまた後ほど)

 

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雨は標高が上がると雪に変わりました。おまけにルート上には湿原があり、もちろん木道とか橋みたいなものはないので時折キンキンに冷えた水の中に足を突っ込んで歩かねばなりませんでした。

それはまだ良いとして、何よりきつかったのは3.5時間ほどの行程で一度も休憩をしなかったこと。

ラクダを連れた遊牧民のお兄さんは馬に乗ってズンズン進んでいきますが僕らは歩き。英語を話せず僕らもモンゴル語やカザフ語を話せませんでしたし、別に休憩しなくてもギリギリ歩けちゃうくらいの速度だったので彼に「日本人フィジカル弱すぎw」とか思われちゃたまらんという意地が働き、結局一度も休憩せずにBCに到着してしまいました。

さすがに疲れた…

 

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BCの様子

BCにはちらほらと他のパーティーがいましたが皆マルチン峰だけ登る予定とのこと。

 

高所順応

(9/5)

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朝は良い天気

この日は高所順応を兼ねてマルチン峰(4050m)に登ります。

明瞭な踏み跡がついていますし一部わかりにくい箇所にはケルンが積んであるので迷うことは基本的にないと思いますが、前日付いた雪のせいで踏み跡が埋もれかなり歩きにくかったです。

 

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マルチン峰へ登っている途中、BC周辺をうろついていた犬のうち一匹が追いかけてきました。

さっすがに頂上までは付いてこないだろと高を括っていたのですが、なんとこの子一緒に登頂するのはもちろん、下山まで一緒でした。野良っぽくもなかったですしこの犬は一体何なんだろう…?

なにはともあれわんちゃんは可愛い

 

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筆者初の4000m峰、登頂です!

 

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Sと犬のツーショット。絵面が完全に飼い主と愛犬。

 

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マルチン峰からの下り。正面に見える台地のスケールがすごい。M先輩撮影

山頂から氷河の様子を偵察し、下山します。

下山は登りに使った踏み跡より北側にある雪渓を一気に下りました。筆者は4000m峰は初めてでしたが幸い高山病にはなりませんでした。しかしこの世には”下山病”というべきものもあるらしく、この雪渓を調子に乗ってかなりの勢いで降りた結果、頭痛に襲われました。結局夜まで頭痛に悩まされる羽目になりました。

 

山頂アタック

 

(9/6)

いよいよモンゴル最高峰フィティン峰へのアタック開始です。この日はBCから氷河上を歩きほぼ富士山と同じ標高のHCを目指します。

氷河へのアクセスについては、マルチン峰の尾根への取り付きあたりまでは昨日歩いた道を行きます。次にマルチン峰の登りはじめからモレーンとマルチン峰との間にできた沢筋を歩き、途中でモレーンの上に登るといくつかケルンがあるのでそれに沿って進み、良さそうなところでモレーンから氷河に乗りました。

 

本格的な氷河を歩くのは僕とSにとっては初めてのことでヒドゥンクレバスに落ちないかとかなりビビッていましたが想定よりも氷河は安定しており、クレバスに落ちることはほとんどありませんでした。

 

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とても静かな世界でした

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M先輩が高山病にかかりかなりキツそうでしたがなんとかHCに到着。

 

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HCからフィティン峰

HC周辺はガチガチに凍り付いた雪の上に数センチの雪が積もっているといった感じでした。一見クレバスもなく安定しているように見えますが周辺にはいくつかヒドゥンクレバスがあるようでした。

BC時点で怪しかった翌日の予報ですがHCにて天気予報を確認したところ翌日の天気はほぼ荒天で確定。翌日の早朝に賭けて眠りました。

 

(9/7)

早朝起きてみると風が強く降雪もあり、時折視界不良になっていたためこの日はHCにて停滞することに。

ひたすらワードウルフをやって時間を潰し夕食をとった後、風が残るもののかなり視界が良くなったため外に出て周辺の様子を観察し話し合った結果、フィティン峰へのアタックを断念しました。代わりにフィティン峰からマルチン峰に至る稜線上にあるモンゴル、中国、ロシアの国境が接するナルマンダル峰(4082m※地図によって標高の表記はまちまち)なら登れそうだとルートを検討し、翌朝夜明けとともに出発することになりました。

 

(9/8)

朝は快晴でかなり冷え込みました。

 

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タイムゾーンの西端のため日の出は遅く日没は早い。M先輩撮影

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日の出。雪山が最もカラフルに輝く瞬間です。M先輩撮影

HCから出発してすぐ、足元から明らかに空洞になっている音がして生きた心地がしませんでしたが何とか通過。

HCからは状態が分かりにくかった稜線への取り付きと斜面も特に難なく通過でき、無事に稜線に乗ることができました。

 

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ナルマンダル峰直下

すぐ横が中国との国境ですので決して越えないように歩きました。

特に難しい斜面などもなく、ナルマンダル峰の山頂に到着です。山頂にはケルンが一つ積んでありました。

 

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ナルマンダル峰からBC方面

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フィティン峰

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記念撮影

写真はありませんが中国側、ロシア側も延々と山やU字谷、高原が続く絶景でした。

 

3国の国境が接する場所、しかも中国との国境ですからあまり長居はせずに下山開始です。

まずHCに戻りテントを撤収した後往路と同じルートでBCまで帰りました。

 

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とても気持ちが良い。M先輩撮影

 

雪中&夜間行軍

 (9/9)

地獄の一日の始まりです。

 

朝起きると予報通り雪が降っていました。僕たちは今日の早朝到着するというラクダを待っていたのですがそれらしきラクダは一向に来ません。まあ天気悪いしこんな日に働きたくない気持ちも分かるっちゃ分かるんだけども…

 

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真っ白け

 

これ来ないやつだな、と考えBCにいた英語を話せるカザフ人に通訳を頼み、他の登山者と同行させてもらう形で何とかラクダを確保し大幅に遅れてBCを出発。

BCに至る道は二つあり、一般的に往路と帰路は異なる道を辿ることが多いようですが僕らは諸々の都合で行きと同じツァガーン・ゴルの国立公園ゲートへ向かいました。

行きと違いちゃんと休憩があってとても楽に歩けました。

 

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晴れている時に歩いたらめちゃくちゃ気持ちよかったんだろうな…

 

特にトラブルなく15時少し前にゲートに到着。本日の行程はこれにて終了!・・・とはなりませんでした。

ここから地獄が始まったのです

もともとの僕らの計画では今日はゲートでテント泊をし、翌日ウルギーに帰るはずでした。運転手もエージェントの旦那さんも英語をほとんど話せなかったのですが、どうやら彼らの素振りから判断するにすぐにここを出発してウルギーに帰るようでした。

うそだろ…??

ウルギーまで7時間はかかるんだぜ…???

しかし早く帰りたいのも事実、さっさと荷物を詰め込み出発しました。

 

出発から1時間後、Sが車に酔ってしまいました。帰りの方が雨で道が悪くなっていましたし、車はパンクを警戒して加減速を繰り返していたのも原因のひとつでしょう。

ともあれSにとってこの日は僕やM先輩以上に長く辛い一日となりました。

 

出発から4,5時間で日没を迎え、そのころにはずいぶんウルギーにも近づき道もだいぶ良くなって速度も出せるようになり安心してうとうとしていると運転手と旦那さんが言い争いを始め、車が停車しました。

言葉が通じないので最初何が起きているのか全く分からなかったのですがどうやら道に迷ったようです。

GPSで現在地を地図に表示させ運転手に見せたりして車は出発し、ほっとしてうとうとし始めるとまた道に迷いました

行きの車でよく何も見ずに運転して迷わないなと感心していたのですがどうやら彼らは道を覚えているのではなく景色を覚えているから迷わなかったらしく、逆に暗くなって景色が見えなくなるとすぐに迷ってしまうようでした。

結局3回か4回ほど迷った末にようやくウルギーに到着。時刻は深夜の1時を回っており、結局ゲートから10時間もかかっての帰還となりました。

ほんとにしんどかった…

 

感想

目標のフィティン峰は登頂できませんでしたが日本では決して見ることのできない絶景や環境をたっぷり味わうことができ、ついでの観光もとても楽しめた海外遠征となりました。

山は、尾根や峰よりかは谷、特に氷河によって削られた広いU字谷のスケールが大きく、その中を歩くのが最高に楽しかったです。

また、氷河も危険ながらも日本の雪渓や氷河にはない開放感や静寂さがやみつきになりそうでした。

何より人が少ないのも良いポイントで、運が良ければ氷河を独り占めにできるのが最高だと思います。

 

自分の課題、改善点がいくつも見えたのと同時に自分が何を楽しいと感じるか、アウトドアのスタイルみたいなものが見えた登山となり、自分の成長にもつながったかなと思います。

 

 

ここからは需要があるかわかりませんが2,3点役に立ちそうな情報を載せておきます。

ここに載っていない情報はネットで検索するとフィティン峰に登った人のブログや登山記録がいくつか出てきますのでそちらを参考にされると良いと思います。

 

登山中の食糧計画

食糧は基本的にウルギーでそろいました。ウルギー市内にはどれも小さいもののかなりの数のスーパーマーケットがあり、どのスーパーにも生活用品(石鹸やマッチ、ライター、トイレットペーパーなど)から食料品が一通りそろっており、困ることはありませんでした。

炭水化物は小麦粉、米、パスタ類と一通りありました。米は日本の米とは決定的に味と香りと食感が違うので注意が必要です。

調味料に関して、コンソメとかは無いように見えましたが醤油は置いてありました。

甘いお菓子はスニッカーズやドライフルーツ、ナッツなどがそろっており行動食をウルギーで揃えるのも十分に可能でしょう。しょっぱい系のお菓子はほぼなかったのでそいうったものは日本からの持ち込みがベストでしょう。

生鮮食品は割高で、スーパーで量り売りをしていました。ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎなどの根菜が中心で、その他の野菜はキャベツ、トマト、キュウリ、パプリカくらいです。果物は割高ながらもそこそこ種類が充実していました。

今回の登山ではフィティンへのアタック時には日本から持ち込んだリフィルのカップ麺やカップメシシリーズ、粉末味噌汁などを食べ、BCでは現地で調達できたもので料理を作るという食糧計画を立てていました。

 

GPSデバイスと連絡手段について

圏外からの連絡手段兼GPSとしてGARMIN社の"inReach Mini"を使用しました。inReach Miniは簡単に言えばSOS送信機やGPSとして利用可能な位置情報付きの双方向衛星通信ができる小型のデバイスです。

今回の登山は一帯が完全に携帯電話の圏外でした。そういった場所でエージェントや家族などの関係者に状況を報告したり、遭難の際にスムーズに救助要請を出せたり、現在地の天気予報を受信できるこのデバイス非常に有効でした。

詳しい機能などについてはこの記事がかなり詳しく解説しているので参考にどうぞ。

outdoorgearzine.com

ただ使用していて個人的に思ったのは、GPSとして利用するならスマホのYAMAPやジオグラフィカ、登山向けのスマートウォッチで事足りますし、天気予報や日常的な連絡なら沢筋や相当な山奥でない限り携帯電話の圏内である日本では必要不可欠ではありませんし、緊急事態の時はそれココヘリで良くね?ということ。

このデバイスの強みが最大限発揮されるシーンは行程の大部分が携帯電話の圏外という環境なのかなと感じました。

(2022.9.11追記:沢登りなど、大半が圏外かつ危険性の高いアクティビティの際は非常に有効かもしれないです。)

なので今回の遠征では大活躍してくれました。

 

服装、装備

9月は普通に積雪があります。HCでは普通に氷点下10度ほどになりましたし、天候も安定していないので日本の厳冬期登山用の装備と、可能ならアバランチギアも持っていくのが無難でしょう。

今回の登山はガソリンストーブ(MSRのドラゴンフライ)を使用しました。ガソリンは3~4Lほど消費しました。ウルギーにはいくつもガソリンスタンドがありましたがストーブ用の缶への給油はできないらしく、ガソリンはエージェントから購入しました。

癖のある英語での会話のため正しい理解かは保証できませんが、BCで会ったガイド曰く、9月は積雪がある程度あるため逆にクレバスに落ちにくいが7月8月はクレバスを覆っている雪が薄いためヒドゥンクレバスに落ちやすい?とのことでした。油断は禁物です。

 

飯テロ

ウルギー初の飛行機の出発が遅れ、11日の昼頃にウランバートルに到着した後、14日の帰国まで各自自由行動で観光などしました。

ウランバートル観光はかなり楽しめましたがそのことについて書くと文字数がすごいことになりそうなので割愛して、美味しかったご飯の写真だけ載せることにします。(ウルギーで食べたごはんの写真も混ざっていますが…)

 

ジンギスカンとか大好きな人はきっとモンゴル料理は口に合うと思いますよ!

 

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それでは今回はここまで!

最後まで見てくださりありがとうございました!